社会と産業の倫理_第二回

第二回のテーマは「社会科学における倫理」。

社会と産業コースの導入科目となっている本講義。科目横断的な講義ということだが、これは自分の「好きな分野」が分かって良いと感じた。私には本回が刺さった。

特に興味深かったのは、最低賃金の話と「無知のヴェール」の話だった。無知のヴェールは学生時代に感銘を受けた考え方の一つで、人の好き嫌いはあまり変わらないものなのだなとしみじみと感じ入った。

最低賃金を経済学のいわゆる需給のグラフで考える点には疑問を持った。現在のような多くの人が生産手段を持たない状況においては、いくら賃金が安かろうが生きていく糧を得るために働かざるを得ないのではないか。つまり、給料が安いからと行って働かない選択肢は持ちづらく需給関係も成立しづらい。それであるからこそ、労基法等の法制度によって”弱い側”に立つことが多い労働者は保護されている。

また、労働力というのは生産量の決定メカニズムには関与しづらい。必要とされる労働力は所与の条件(生産自体のキャパシティやニーズ等)によって必要量が決まっていると考えるのが自然ではないだろうか。例えば機械化された工場であればいくら労働力が安かろうが高かろうが、必要とする労働力はある程度一定と考えて良いのではないだろうか。

私の意見を述べると、最低賃金はどんどん上げていくべきだと思う。最低賃金を上げると困るのは雇い手である企業だろう。これによって企業間の競争が促進され、生産効率も上がっていくのではないだろうか。日本には低金利によって生かされた「ゾンビ企業」が多かったり生産効率が低いと聞く。もちろん、最低賃金を上げると最終的な価格にも転嫁されるだろうが賃金が上がれば購買力には影響が少ないだろう。淘汰される側の企業について再挑戦あるいは再雇用がスムーズに行くような仕組みがあれば、競争が促されることで良い循環となるのではないだろうか。

そういった意味で、障害者作業所のような施設が健常者向けにあったら良いと思う。刑務作業のような機会を提供できているのだから出来ない道理はあるまい。それこそ、穴を掘ってそれを埋めても良いのだ。

このような公共的な職業提供施設があれば労働者を雇おうとする企業は”労働力の買い叩き”ができなくなる。最低賃金付近の給料のアルバイト等でも面談等があることで、それこそ熟練の機会が奪われているのではないか。

そんな感じのことを考えつつ、興味深く聞けた講義だった。経済について学び直したいと思ったし社会科学というものにどうやら興味があるようなので他の分野も学んでみたい。やりたいことがたくさんあるのは、ありがたいことだ。興味の発掘も兼ねて本講義は最後まで受講したい。

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